【第一四半期絶好調!】なのに上方修正できない訳

銘柄分析

2024年5月9日、絶好調な第一四半期決算を発表した企業があります。

ひゃはりん
ひゃはりん

今回は知られざる黒子企業のお話です

業界の裏話も書きましたので是非最後までお読みください

ミヨシ油脂(4404)

油脂を食品用素材や工業用素材へ加工する製造企業です。およそ食品用途が7割、工業用途が3割となっています。

ミヨシ油脂が後場急騰、1~3月利益が上期計画を超過

2024/05/09 14:14

マーガリンやショートニングなどの食品事業と工業用油脂や各種脂肪酸など油化事業を展開しているミヨシ油脂(4404)が後場に入り、急騰した。一時は1478円まで上伸し、2月29日の年初来高値1356円を更新した。午後1時50分現在、前日比128円(10.2%)高の1383円で推移している。

本日午前11時50分に2024年12月期第1四半期(1月~3月)の連結業績を発表し、好感された。

営業利益は12億3300万円(前年同期は1億2300万円の赤字)で着地した。据え置きとなった上期(1月~6月)計画の営業利益8億3000万円(前年同期比45.6%増)を超過し、通期計画の営業利益13億7000万円(前期比42.2%減)に対して進捗率90.0%となり、上期と通期計画の上振れを期待する動きとなった。(略)

会社四季報オンライン(2024年5月9日掲載)より引用

第一四半期(1~3月)の時点で営業利益では通期計画の9割を達成しています。

素晴らしい第一クォーターになりましたね

以下が2月に発表した通期予測に対する進捗率です。

通期予測
(2月発表)
第一四半期
終了時点
進捗率
売上高
(百万円)
54,00014,16926.2%
営業利益1,3701,23390.0%
経常利益1,3401,24292.7%

とここまで絶好調な決算であるにもかかわらず、通期決算はおろか中間決算すら業績予想の修正を実施していません。一体なぜなのでしょうか。

業績予想の修正をしない理由

決算短信に理由が記載されています。要約しますと、

原料相場が不透明な為

ミヨシ油脂はパーム油などの原料相場によって利益が大きく変動する傾向があります。その為いくら第一四半期が好調だといっても年後半に原料相場が高騰するなどした場合は、利益が目減りしてしまいます。あまり早い段階で修正する事は困難なのも理解できます。

大型の設備投資が発生する為

また下期からの新物流拠点や本社移転、工場再構築の話も間違いではないでしょう。これらの費用を多めに計上する事で、当期利益を調整する可能性も残しているのかもしれません。

その他

そしてこれは推測となりますが、それ以外の理由として製パン業界からの値下げ圧力が考えられます。昔からミヨシ油脂はメインユーザーである製パン業界向けに製品価格を主導的に決定できずに苦労してきた経緯があります。(これはミヨシ油脂に限らず加工油脂業界に所属する企業はすべて同様です。)

原料油脂相場によって利益が大きく変動する訳ですが、価格転嫁がしずらく(希望の改定時期や改定幅通りに値上げできない)、2022年12月期は赤字決算となりました。価格転嫁がしずらい傾向は特に加工油脂メーカーに顕著です。それはミヨシ、Jオイル、ADEKA(食品部門)などの2022年決算が軒並み赤字もしくはほぼ赤字であった事から明白です。「その決算を見て製パン業界がようやく大幅に遅れて値上げを認める→2023年は大きく利益改善→2024年はその流れが継続」という構図です。

<加工油脂メーカーの価格改定の軌跡>

この好調な決算内容を受けて製パン業界が次にとるアクションは間違いなく「値下げ要求」です。したがって加工油脂メーカーの次のミッションは「いかに値下げを最小限に食い止めるか」になります。これを通期決算予測に盛り込む事は不可能ですし、下手に上方修正をしてしまうと、製パン業界を刺激する事になりかねません。

ひゃはママ
ひゃはママ

製品価格を主導的に決定できない業界ってどうなの…

実は食品業界にはいっぱいあるのよ…

メーカー数が多く足を引っ張り合っている面も有り

たしかに食べ物は安いと助かるけど

適正な利益が得られる構造になって欲しいわね

もちろん必要以上に利益が出ているのであれば、価格を下げる事は悪くないのかもしれません。しかしながら、加工油脂業界は絶好調とはいえ「営業利益率は8%台である事」、「2期前の赤字を取り戻す過程にある事」を考えると、製パン業界もしっかり利益が出ている中での値下げは時期尚早だと思います。

社会的には「値上げ=“悪”」というイメージは薄れつつありますので、これを機に業界体質改善が進む事を望みます。

銘柄情報

ミヨシ油脂(4404)

株価:1,411円(2024年5月17日時点)

配当:年間40円予想

配当利回り:2.83%

優待利回り:0.71%

総合利回り:3.54%

優待内容

権利確定月12月末日
株数100株以上
内容1,000円分のクオカード

まとめ

利益率が様々な要因で変動してしまう加工油脂業界について解説しました。ミヨシ油脂に関しては今期中に「上方修正&増配発表」をすると思いますが上記理由によりタイミングは全く分かりません。年末あるいは年明けになる可能性もあります。

またこれは余談ですが資本効率にも改善の余地がありそうでして、投資有価証券を120億円分(うち含み益が50億円)保有しているようです。総資産640億円の企業にしては規模が大きいと感じます。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました